時の雫-風に乗って君に届けば

§12 光が満ちるトキ


Episode 6 /12



 朝、どこか嬉しそうにしながらも照れくさそうに谷折は言ってきた。
「今日って、買い物の日だよな」
「……あ、忘れてた」
谷折のその様子を見て、頭の中で理由について考えてみてから、圭史はそう吐き捨てるように言った。
それに谷折はビタッと停止し俯いたまま言う。
「忘れてたって、どっちの意味で?」
その異様な雰囲気に、圭史は内心汗をたらすと苦笑いしながら言葉を放った。
「ちょっと、待っといて」
暗い谷折を放っておきながら圭史はとある教室に向かっていく。参ったように頬をぽりぽりと歩きながら。
殆ど開けた事のないクラスの扉を開け、辺りを見回すと目当ての人物を見つけ声を放った。
「伊沢!」
それに呼ばれた栞は顔を向けるとすぐ席を立ちやって来た。
「なに?」
「あのさ、言うの忘れてて突然になったんだけど、今日の放課後に卒プレと女子へのホワイトデーのを買いに行くの付き合ってもらえない?大丈夫だったら」
圭史の顔は見事にいつもの表情を崩していた。
栞はじっと圭史に目を向けたまま何かを考え込んでいる様子だ。そしてぽつりと言う。
「あと、今日、しかないもんね……」
明日は卒業式。その日に卒業生へのプレゼントがなければ話にならない。
圭史は、じ…、と栞に目を向けると、他の人には聞こえないように小声で言った。
「あと、さ、俺の個人的のホワイトデーの、見立ててもらえない?」
それには一瞬ぽかんとした顔を見せた栞だったが、すぐ笑顔になり言った。
「いいよ」

内心ほっとした気分で圭史は元いた場所へ戻っていった。
そこに谷折はいたのだが、額を壁に預けどんよりと雲を背負っているくらいに暗かった。
汗をタラリと流す気分を抱きながら、苦笑しつつ圭史は口を開く。
「おい、一緒に行ってくれるって」
その言葉一つだけで、谷折は即座に顔を上げぱあぁっと晴れやかな顔を向けた。
「……お前、見てるこっちが恥かしい」
思わずそう呟いた圭史だった。
一度家に帰ってから、市駅南出口に12時半待ち合わせとなった。



 本日は1、2時間目のみの授業だった。
3年生及び生徒会役員は卒業式の予行演習で講堂にいた。生徒会役員はまとまって一列に座っている。先頭は会長の薫、続いて美音。それから順に快に丈斗、亮太だった。
演習の最中、お喋りをする事はなく美音は真っ直ぐと壇上に目を向けていた。
例えどんなに横の快が視線を美音に向けていても。
 そして、1時間目終了のチャイムが鳴り、講堂でも休憩時間がとられた。
「……はぁ」
無意識に吐き出された美音のため息に、ずっと隣で間を見ていた快は喜々として声を出した。
「今日はやけにため息ついてますね」
その台詞に何とはなしに顔を向けて美音は答える。
「そお?そんなに出てた?」
「はい、珍しく。どうしたんですか?」
「うーん……」
その二人の様子を、亮太と丈斗は少々訝しげな表情で窺っていた。
「どこかしんどいんすか?」
「うーん、しんどいと言えば、しんどいかなぁ?」
何かを考えるように言った美音に、快はぱっと笑顔で言う。
「もしかして俺に恋わずらいだったりして」
それを聞いて目を思わずぱちくりさせた美音の視界の向こうには、「あいた〜」と額に手をあて俯く丈斗と何とも言えない表情で天を見遣る亮太がいた。
「あはは、何言ってんだか」
笑いながら快の腕をぺしと叩いて言った美音だった。
快はぎこちない表情を向こうに向けると、気を取り直してまた笑顔で美音に言う。
「元気がなかったみたいで心配、してたんすけど」
「うん?そうなの? 別になんともないよ」
「あ、それは良かったです。じゃあ今度遊びに行きません?」
その台詞を聞いてぎょっとしたのは丈斗。亮太はため息をついている。
美音は又目をぱちくりとさせると視線を逸らして、すぐ笑顔になり言う。
「テストがあるのに何言ってんの」
「や、テスト終わってからです……!」
薫は呆れた顔で快を眺めている。
美音は目線を快の方から外し前方を眺めて口を開く。
「んー、春休みに皆でどっか行くのもいいかもね。最後の思い出作りに」
にこり。と笑顔で最後の言葉を綴った美音に、快は無理矢理笑顔を向ける事以外出来はしなかった。
その隣で丈斗は額に手を当てたまま息を吐きつつ顔を横に振っている。
亮太は組んだ足の上に肘を置き、頬杖をついてそっぽを向いていた。
「あ、そうだ。野口君」
思い出したようにそう台詞を口にして、快の向こうにいる丈斗が見えるように顔を出した美音に、はっとしてすぐ顔を向けて返事をした丈斗。
「はい」
「新聞の方はもう済んだ?」
「今日この後最終チェックをして、印刷会社のほうに連絡入れたら、明日の朝に届けて貰う手筈になってます」
丈斗の言葉に、亮太は何とも言えない表情で横目を向けていた。
美音は笑顔のまま数秒止まっていたが、笑顔を崩さず口を開く。
「……。明日には間に合うのね」
「はい、間に合わせます」
「じゃ、よろしくね。二人とも」
「はい」
快と丈斗が揃って返事をしたのを見て美音は顔を前方に向けた。
「あ、あの」
快がそう口にした時、美音は隣の薫に顔を向けて声を放っていた。
「そう言えば、明日って……」
薫と話し出した美音を見て、快の口は閉じられた。


 予行演習が終わり、教室に向かっている時、階段を上りながら、薫、美音と亮太の3人は言葉を交わしている。
「今日は生徒会室寄って行くのか?」
頭の後ろで両腕を組んでいる亮太の問に美音は真っ直ぐと進みながら言う。
「寄らない。真っ直ぐ帰るよ。今日買い物行くんでしょ?」
「そうだけどよ、様子も全く見に行かなくていいのか?」
「いいの。一旦家に帰らないといけないし」
「着替え持ってきとけば良かったんじゃねぇの?」
「いいの。一度家に帰るの」
「ふーん」
「あ!……美音ちゃん、私今日家庭教師変えてもらうの忘れてた」
「え?じゃあ薫ちゃん無理じゃないの?」
「うーん、……そうだねぇ。残念だけど、二人で行って来て?」
「俺はいーけど」
「……、分かった。しょうがないもんね」

教室のある階に出た所で徐に亮太が言う。
「しかし、いい加減どうにかしないといけないんじゃないの?」
薫も美音もそれには無言のままだった。
「おい、春日だよ」
「あ?私? 何が?」
「……藤田の事だよ」
それに美音はちらりと視線を注ぐと表情なく言う。
「だから今仕事して貰う様にしてるんでしょ」
その台詞に亮太は「あ〜」という言葉に困った顔をして目線を右に左にさまよわせながら言葉を紡ぐ。
「そういうんじゃなくてだなぁ、もっとメンタル面での話で」
「メンタル面? 仕事するのに何で私がそこまで気を使わなくちゃいけないの?」
「気を遣うとかじゃなくて、……お前本気で気付いてないのか?」
怪訝な顔で言った亮太に、美音はじっと目を向けて無愛想に言う。
「なに」
それに薫は何の抑揚もなく言葉を投げる。
「藤田君の事は放っておいたらいいじゃない。勝手にやってるだけなんだから」
「それはそうなんだけど、傍から見てる分ではどうも居た堪れなくてなぁ……」
「だったら、亮太が言ってあげたら?」
そんな薫の言葉に亮太は顔を上げる。
「おいおい、俺が言ったって何にもならないだろうが。春日が」
「はぁ? 私が何を言うって言うの?」
不機嫌な様子をあらわにする美音に、亮太は困った表情を浮かべた。
「……何をって……」
そう困ったように口に出した時、目を向けた先に教室の扉を開け出てきた圭史の姿が目に入った。
亮太はため息をついてから口にした。
「いーよ。俺も別に部外者だしな」
「だったら最初から何も言わないでよ」
「そうは言ってもだなぁ、見てると同じ男としては……」
「なにそれ? だから私にどうしろっていうの? なんで私がどうにかしないといけないの? 私がそこまでしてあげる道理はないでしょう?」
「……お前がそれでいいっつうんなら、もう俺は何も言えないよ」
美音は亮太を睨む様に見つめると、感情で抑えつつ言葉を放った。
「……亮太のそういう言い方って、すんごいイライラする」
美音はくるりと向きを変えるとスタスタと自分の教室に向かっていった。

 圭史は何があったんだろうと数秒は眺めていたのだが、当初の目的を思い出し向かう事にした頃、捨てるように言った美音の言葉が耳に聞こえて、思わず体を小さくしていた。自分が言われている訳ではないのに。


 終礼が終わったというのに、美音はずっと続いている苛々感を持て余し気味にしていた。
今日の、殆ど荷物が入っていない鞄を手にして教室を出て行く。
殆どの生徒が下駄箱に向かっているので、廊下に人は多かった。
美音は小さくため息をつくと、気を取り直したように顔を上げ階段の方へと向かっていく。
そのまま真っ直ぐと向かい踊り場に出た所で、見慣れた人物に気がついた美音はふと足を止めた。
「あ、春日さん」
安心したような笑顔を浮かべて、そう呼んだのは快だった。
 自然と美音の表情は無くなった。
「こんな所で何してるの?」
「え?いや、ちょっと」
言葉を濁すように言った快の横を美音は何も言わず通り過ぎる。だが、その後ろを快はついてきていた。
美音の中に重い気持ちが生まれたが、何も口にせずひたすら耐えて歩き進めて行く。
階段を降り1階に着いてそのまま進んでいく美音の後ろを快はいた。
図書室へ向かう為に廊下を曲がっても、快がついて来るので美音は足を止め振り返らないまま言葉を放った。
「藤田君が向かうのはあっちの生徒会室でしょ」
「春日さんはどこに行くんですか?」
いつもとなんら変わらない快の声に、美音は気持ちを抑えながら言う。
「……図書室」
「生徒会室、その後で寄って行きますよね?」
「行かない」
吐き捨てたい気持ちを必死で堪えながら美音は言った。
「何でですか?新聞の仕上がりはいつも最後に目を通していたじゃないですか」
その台詞に美音の手に無意識に力が入った。
「今回は二人に任せたでしょう!」
「でも、いつもだったら、ちゃんと最後まで付き合ってくれたじゃないですか。なんで今回に限って」
「いつまでも私が傍にいると思ってるの?!4月になったら、二人が全部を取り纏めていかなくちゃいけないの!」
「分かってます。でも今はまだ3月です」
その台詞に美音は憤りと共に口を噤んだ。昂ぶった感情に言葉が出せなかった。
「……それに、ずっと様子がおかしいじゃないですか。何て言ったらいいか分からないけど、話していてどこかぴりぴりしてるし。……俺の事、避けてませんか?」
美音の体に力がこもる。いろんな感情が心の中を渦巻いていく。
 なぜ、彼はこうも通じていないのだろう。
それは美音の体の中を駆け巡っていく。
そして、頭に浮かぶ、亮太の台詞。 いい加減どうにかしないといけないんじゃね?
理不尽にさえ感じる周りの言葉が、今美音の神経を逆撫でしていくようだった。
「……こうやっている時間に、野口君は一人で仕事してるんだよ。二人に任せたらいつも藤田君は野口君に任せっ放しで、すぐ人を頼ってくる。
二度手間なんて当たり前で、それどころか人の負担を増やすだけ増やして……!
どうしていつも人を当てにするの?!どうしてそれで生徒会役員になったの?!私は藤田君の面倒を見る為にいるんじゃない!私を困らせないで!」
そんな美音の感情的な叫びさえ、快はすんなりと流していく。
「だって、仕方ないじゃないですか」
「だらしなさで仕事が出来ていない事に仕方が無いなんて理由にはならない!」
「じゃあ俺の事避けないで下さい。ちゃんと見てください。一人の男として、見て欲しいんです……」
美音からすれば、理由にもならない快の言葉。
「……一人の?」
そこでやっと美音は快を振り向いた。その間に異様な緊張感が漂っていた。
美音は鋭い視線と共に口を開く。
「満足に与えられた仕事もこなせない様な1年が。……それに、……後輩として以外何も思えない。今までもこれからも!それは前と変わらない!」
「それでも、ずっと」
その快の台詞を遮り美音は言う。
「藤田君が今しなくちゃいけない事は何?ここにいる事じゃないでしょう?私がこれだけ言っても野口君に仕事を任せっきりにするの?それとも私を怒らせたいの?困らせたいの?」
「ただ……」
「何回も同じことを言わせないでね。私はただ生徒会の後輩に一日も早く仕事が真っ当に出来るようになって欲しいだけだから。それ以上の事は何もないから。今日この後も用事があって時間が無いし、もう行くから」
一歩進めた足を追うように、快も足を進めた。それを見て美音はかっとなった。
「いい加減にして!!」
そう言い放ち、美音は毅然とした態度と後ろ姿で図書室へと向かっていた。
その背中に快が言葉を放てる余地は無かった。


 先に図書室に来ていた圭史は、何故か廊下で見た時の美音の様子が気になって、扉が見える場所の本棚に、本を見ているフリをして立っていた。
 あの時、自分に気付いていた亮太が何か言いたそうな顔をしていたように見えた。
聞こえてくる会話では何の話だったのかよく分からなかった。だが、美音の気分を悪くさせた事だけは分かった。

 ― ……多分、1年のあの子の話かな? ―

なんて事を思っていると図書室の扉が開いた音が聞こえ、圭史は反射的に目を向ける。
それは待っていた美音だったのだが、顔は俯かれていて前髪で表情は見えない。
だが何かを堪えているようにも見える。
「?」
圭史は何かを思うより先に身を通路に出し美音に向かおうとしていた。
 いつもならそこから右に行きいつもの席に向かう筈であるのに、美音はそのまま本棚に入る通路に真っ直ぐと向かってきた。空いた腕を顔に運び手の甲で目を拭っているように見えた。

 ― え……? ―

美音の目に、前方にいる圭史は映っていないようで、そのまま真っ直ぐに早足で向かって来る。放っておけばこのまま自分とぶつかる彼女に圭史は腕を伸ばし彼女の腕を掴む。
「春日?」
そこではっと上げた美音の顔を見て圭史の心に戸惑いが生まれる。
頬を流れ落ちる涙に、圭史は手を離さぬまま声を出した。
「どうした?」
その優しい声音に、美音は何かを必死で堪えるように目をぎゅっと瞑るとただ無言で首を横に振り伏せた目を手で拭うだけだった。
そして震えた息を長く吐き、瞬きを数回して目の端に溜まっていた涙が又零れ落ちた。
圭史の胸に心配の気持ちが渦巻いているその時、美音はまるで引き寄せられるようにその胸にポスンと顔を落とした。
「……」
圭史は何も聞かず、美音の背にそっと手を回しあやす様にぽんぽんと優しく叩き顔を寄せた。その頬にも彼女を感じていたくて。
 それから数分の時間が経ち、ようやっと美音が顔を離し、静かに声を出した。
「……ごめん」
まだ微かに震える声。
理由を話さない事の謝りの言葉にも聞こえて、圭史はそっと指でまだ残っている涙の痕を拭った。それに反射的に目を静かに瞑った美音に、心の奥から湧き出た遠い昔に感じたような甘酸っぱくて小さく衝き動かされるような感情が圭史の背をそっと押した。
涙を拭った手をそのまま彼女の頬に添えてそっと静かにその小さくても肉付きのよい唇にキスを落とした。触れるだけのキスなのに圭史の胸は躍りだしそうになっていた。
離した後、初心だった頃のような、嬉しい気持ちと凄く照れくさいような気持ちが入り混じって、ほんの数瞬美音の顔が見れなかった。
初めて発見したような、素の自分に、圭史は少し戸惑いをも感じていた。

 普段の自分なら絶対しないキスだった。
誰に見られるやも知れない場所で衝動に動かされてしたのは触れただけのキス。
 圭史の心に、温かく大切な愛しいと感じる、火が燈っていた。

 そんな自分に呆れたフリをして冷静を装い、美音に視線を向ける。
ぎこちなく俯いたままの美音の頬は赤い。
 圭史の気配に気づいたのか、美音はそっと顔を上げた。まだ少し潤んだままの瞳が圭史を捕らえると先ほどとは変わりどこか穏やかな色を揺らして言葉を紡いだ。
「あまりにもイライラして、それが爆発してしまって、堪えきれなくなっただけなの。……もう大丈夫」
まだ少し辛そうな微笑と、照れ笑いにも似たのが混じったような笑みを浮かべた美音。
「……」
ただ優しく美音の頭を撫でてから、微笑を溢すと圭史は優しい声で言っていた。
「……帰ろうか」
「……うん」

 帰り道、美音はどこかぎこちなくて、まだ圭史に顔を向けられないでいた。
そんな彼女に圭史は顔を向けて言葉を紡ぐ。
「あのさ、たとえ出すから、それにどれくらい好きか答えて?」
目は見れなくても顔を上げて美音は答える。
「? うん」
それを聞いて圭史は前方に顔を向け言葉を捜す。
「えーと、シュークリーム」
「普通に好き」
「ショートケーキ」
「うん、好き」
「チーズケーキ」
「結構好きー」
にこ、と笑顔を浮かべて言う美音を見て、圭史は微笑を浮かべ続ける。
「ロールケーキ」
「好きー」
「オレンジジュース」
「かなり好きー」
「チョコ」
「好きー」
「パフェ」
「好き!」
「えーと、次は、遊園地」
「うん、好き」
いくつかの質問が続き、美音は素直に答えていた。
「伊沢」
「大好き」
にこっと笑顔で言った美音。笑顔でそれを眺めながら圭史は続ける。
「谷折ゆき」
「えーと、……え?谷折君って下の名前ゆきって言うの?」
それには驚いた顔で反応を見せた美音だった。
「うん、正真正銘名前はユキっていうんだよ。だからフルネームで呼ばれるとすんごい顔になって面白い」
「へー、初めて知った」
「で、谷折は?」
「え? まぁ、まぁ好き」
「唐揚げ」
「大好き」
「俺も。 川浪さん」
「うん好き」
「瀧野圭史」
「うん、すん……、って、瀧野くん?!」
何を言わせるのと顔を赤くして圭史を見る美音に、思わず圭史は笑いを溢した。
顔が赤いまま怒る美音に、圭史は「ごめんごめん」と謝りながら笑ったまま道を進む。

 ― ……すんごく好き、って言おうとしたのかな? ―

そんな事を考えて圭史の顔は緩んだままだった。
「まだ笑ってる!ひどーい」
「はは。で、何て言おうとしてたの?」
圭史がそう言うと美音は途端に口を閉じ赤い顔を前に向けた。それを見て圭史の顔には尚笑みが零れる。