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その12 −−− 美音が熱を出して1週間休んだ2月の下旬。美音と圭史の母たちの会話
                  (§11:優しさの裏側)
「あ、そうそう、なんかうちの子がね、今月の初めくらいに熱出して寝込んでて」
「あら?風邪?」
「まぁ、そうだとは思うんだけど、1週間も」
「え?それは随分ひどかったのねー」
「うん。休む前の日にね、学校から帰ってきて様子おかしいから触ってみたらすごい熱くて。すぐ体温計持ってきて計ったわよ。
それで、次の日の朝、何やらうちの娘、圭史君に電話しててね」
「圭史に?」
「風邪で熱でたから休むって。それで連絡入れるのも珍しいなぁと思って訊ねてみたんだけど」
「うん」
「前の日に、圭史君が助けてくれて、家まで送ってくれたからって。何か聞いてる?」
「圭史が?何かしら?何も聞いてないわぁ。普段から学校のことなんて話さない子だから。でも助けたって何から助けたのかしら?」
「さぁー?全く分からないのよー。それから美音ってば高熱で寝込んでたから。
その後もずっとしんどうそうで聞くタイミングもなくて」
「でもまぁ、うちの子が悪いことしてた訳じゃないから、親としてはほっとするけど」
「そうそう、それでね、圭史君が毎日学校帰りに寄ってくれてね、その日の授業のノートとか差し入れとか。やっさしーわよね!圭史君」
「え?うちの子がぁ?ほんとにぃ?全然そんな話しないから知らなかったわー」
「ほんとよー」
数秒沈黙の後、二人同時にため息。
「はぁ」
「…え?なに?」
「…そっちこそ」
「ううん、なんとなく出ただけよ。そっちは?」
「え?私もよ」
「「……」」
二人目を合わせ、にこーと笑顔を向けあった。

―このまま二人うまくくっ付いて近い将来は(お嫁さん・お婿さん)になってくれないかなぁ―
「はぁ」
―……なんて、うまくいかないわよね……―
「どうかした?」
「ううん、なんにも」
と笑顔を向けあう、圭史母と美音母でした。
 

 
当人たちは知らない。母親たちがこんな会話を繰り広げているなんて(笑)
知ったら卒倒するかもw(月の猫)