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その14 −−− 二人 聡&圭史

 心地よい空気の中、まるで風に乗ったように駆けて行く姿を見つけて声を放っていた。
「けい!」
その声に圭史は足を止め振り向く。
「よぉ」
呼び止めた聡を見て、圭史は笑顔を向けた。
変わらない圭史に聡はいつもと変わらず声を掛ける。
「急いでどうした?珍しいなそんなに走ってるなんて」
「ああ、時間が気になってなんとなく。そっちは?」
「俺、今からバイト。そっちは?」
「彼女とデート」
「ふーん、またすぐ別れんなよ?」
「今度は大丈夫。多分、だけど」
「へぇ」
「じゃあ多分もう待ってると思うから。また」
「おう、頑張れ〜」
「おー」
と軽く手を上げると圭史は颯爽と走っていった。
 その後ろ姿を見て、聡の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。
……あんな笑顔を見たのは初めてだった。
本当に幸せそうな笑顔。
どんな彼女なのかは知らないが、いい相手といるんだな、と聡は自分のことのように嬉しく思った。
「……幸せになれよ〜」
と一人呟いてみて思う。
「ああ、充分幸せか」
それは大学生の春を迎えたとある日の出来事。

 
ほのぼのですね
圭史の彼女、知ったらどんな顔するんだろう(月の猫)